
今日は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を行う際の4つの課題を整理をしてみます。
●前向きなIT投資が少ない
日本では、前向きなIT投資を行う企業が少ないといわれています。
IT関連費用の内、8割が現行ビジネスの維持・運営に充てられているのです。
2017年9月に電子情報技術産業協会が実施した「国内の民間企業における IT に対する意識調査」の結果、「IT予算が増える理由・用途」を日米で比較すると、日本は業務効率化・コスト削減であるに対し、アメリカはITによる製品・サービスの開発の回答が最も多く、日本は「守りのIT投資」を行う傾向が強く、アメリカは「攻めのIT投資」を行う傾向が分かりました。
このままでは、ビジネスの変革に新たなコストや人材を割り当てることもできずに、最新テクノロジーを駆使した競争力を獲得することは困難になってしまいます。
●システムが複雑化しすぎる
社内システムが複雑化しすぎてしまい、DXしようにもデータ活用・連携ができないケースもあります。
その他にも、部門ごとに個別最適化したシステムを利用してきた場合は、さらに全体システムの最適化が困難となります。
そのため、DXする際には業務プロセスの見直しや新たなシステムへの移行が求められます。
老朽化したシステムはDX推進の障壁となりますが、それ自体が複雑化したシステムとはいい切れません。
自分たちで修正困難なレガシーシステム(ブラックボックス化したシステム)こそ問題なのです。
例えば、システム障害が発生した場合、システムの中身が分からなければ迅速な対応ができません。
社内にある他のシステムと連携していれば、業務の生産性がさらに低下し、対社外的にも対応が遅れるなどリスクを伴います。
また、レガシーシステムを運用し続ける限り、複雑化したシステムの対応・運用にコストを投入しなければなりません。
ここに新しい技術を採用すれば、カスタマイズが積み重なり、より複雑なシステムとなります。
また、短期的なシステム開発・改修を繰り返した結果、保守・運用コストが長期的に高騰する事態を招いているケースも考えられます。
これでは、いつまでたっても戦略的なIT投資にコスト・人材を投入することができません。
●IT人材の確保と教育
前向きなIT投資の少なさと複雑化しすぎたシステムを解消するカギは、IT人材の確保・教育にあり、IT人材の需要が高まっています。
しかし、生産年齢人口の減少からエンジニア人口の減少が見込まれており、現時点の予想では2030年にはエンジニア人口が78.9万人も不足する恐れがあるとされています。
また、日本におけるIT人材の7割がITベンダーに所属しています。
今までの日本では、企業はITベンダーにIT周りの業務を丸投げしてきました。
このため企業には、DX推進に必要なIT人材が不足しているのが現状です。
今後は、デジタルテクノロジーの知見やノウハウ、IT人材の確保が急務の課題となるでしょう。
さらに、IT人材の能力を活かす環境も整えなければなりません。
今後、老朽化したシステムを熟知した人材が退職すれば、必然的にブラックボックス化してしまいます。
最先端技術に明るい人材が旧態依然のシステムに振り回されては、能力を活かすことができません。
●既存システムとの連携
そもそもデジタルテクノロジーやビジネスに親和性のない企業もあります。
既存のシステムがビジネスプロセスと密につながっていればいるほど、現場サイドから抵抗されることもあるでしょう。
ただし、新たな技術を採り入れなければ、先進的な競合企業に後れをとります。
社内における業務プロセスを最適化し、対外的にビジネスで新たな価値を生むためにも既存システムとの連携を図らなければなりません。
DXを実施する際は、現場サイドにも理解してもらえるように丁寧に説明することも大切です。